小さい、なのに動く

HINOKO小宮さんが製作したミニチュア作品

鍛金に使う道具である金床とそのミニチュア(上にちょこんと乗っているミニチュアが見えますか?)

カナヅチとそのミニチュア

この世界のすべてのものにはサイズがあります。道具にも当然サイズがあり、普通は人間が使いやすいサイズに落ち着きます。ところが、なぜか、一部の人間はそれをあえて大きく作ってみたり、逆に小さく作ってみたりして、どうやら遊び出すらしいんです。

今回登場するHINOKOの小宮貴裕さんもそんないい意味で酔狂な方のお一人で。小宮さんは、ハサミやカナヅチなど割とポピュラーな道具から、万力(まんりき)や金床(かなどこ)といったマニアックな道具まで、ミニチュアを製作されている方です。

子供の頃、誰しもミニチュアやプラモデルで遊んだり、そこに面白さを見出すことはあるものです。じゃあ、小宮さんも小さい頃からそういったものにのめり込んでいたのかというと、どうもそうではないらしいのです。ここが小宮さんのミステリー。

ただ小さいだけでは満足できない。やっぱり本物のように動かないとダメだ、ということなんです。市販のミニチュアやプラモデルは小さいだけで、動きが本物そっくりに再現されていない場合も多いです。小宮さんの作る作品は、どれも本物のように動きますし、使えます。素材からして本物なんです。

だから、カナヅチをプラスチックで作ったりはしません。ハサミはステンレスで作られ、カナヅチや万力、金床、消化器、ガスボンベなどは鉄から作られます。実際に持ってみるとわかるんですが、ガスボンベなんかは明らかに鉄の塊が手のひらに沈み込んで行くような感覚を持ちます。本物を何かの魔法で「えいっ!」と小さくしたぞ、と言わんばかりの存在感。

この、ミニチュアなのに、まるで本物、なのに小さい、なのに本物みたい、という驚きのループをもたらしくれるのが小宮さんの作品です。

遊びから始まって、かれこれ5,6年

子供の頃に特別ミニチュアやプラモデルにのめり込んでいたわけではなかったという小宮さん。では、一体何がきっかけで現在の作品を作るようになっていったのか。

小宮さんが学生時代に作っていた作品のイメージ。右のような金属の板を加工することで、左の作品が出来上がります。

小宮さんは、美術大学の工芸学科で金工(きんこう)を専攻していました。金工とは、金属を用いた工芸のことです。この分野では、新潟県の燕三条なんかが盛んらしいです。小宮さんは、大学でカナヅチで薄い金属の板を叩いて形に成形していく鍛金という技術を用いて、普通の大きさのお皿などの作品を作っていました。

そのうち、遊び感覚で、仲間内で鍛金に使う道具であるカナヅチを小さくしてミニチュアを作ってみようということになったそうです。それがかれこれ5,6年前のことです。そこから小宮さんの探究心は収まることはなく、気持ちは膨らんでいきます。

製作を開始し始めた頃は、作品の一点一点を金属からの削り出しで行なっていたそうですが、さすがにそれでは製作の効率が悪いということで、途中からは鋳造(ちゅうぞう)を始めます。鋳造とは、金属を熱で溶かし、鋳型(いがた)に流し込んで作品を作る技法です。

鋳型というのは金属を流し込む型枠のことですが、小宮さんは特に大学で鋳型の作り方を習ったわけではなく、人に聞いたり自分で調べたりして独学で習得しました。もともとものづくりの得意な方ではあるものの、やはり熱した金属を鋳型に流し込む角度など、製作にあたって難しい点も多く何度も試行錯誤を繰り返したそうです。

原型を作るのがミニチュア制作の中での一番の肝だそうですが、原型製作も納得するまで時には数週間を費やすこともあるそうです。小宮さんは現在30歳ですが、すでに職人の気風を漂わせています。こだわりの中から作品たちが生まれています。

すべては小さく

作業スペース

作品が小さいのは当たり前なんですが、ほかも小さいです。例えば、作業スペース。小宮さんはシェアアトリエの一角のスペースで作業をしているのですが、所狭しと並んだ道具たちに囲まれるようにして製作します。「小さいものを作っているからかわかりませんが、道具も手の届く範囲に置きたいんですよね」と、作業スペースまでミニチュアというかミニマリズムの精神が表れているような光景。

作品が小さければ、鋳型や使う道具も小さいものが多いんですね。残念ながら、写真ではお見せできないんですが、鋳型は手のひらにちょこんと載せれるくらいの大きさで、作品は作品でもちろんいいのですが、この鋳型の小さな佇まいにも何かグッと来るものがあります。

また、ハサミを製作する道具の中でカナヅチのようなものを使用するのですが、これもまた美しい曲線を描く柄は細く、先端の金属部分はこじんまりとしています。

ここまでくると、単に動く小さいミニチュアを作るのが好き、というよりは小宮さんの製作スタイル全体に「小さいことの美」が体現されているのかもしれませんね。

どうやって作ってるの?

実際に小宮さんがどうやって作品たちを生み出しているのか気になるところ。今回はハサミを製作している風景を見させてもらえることに。

鋳型から取り出されたハサミ

余計な金属をヤスリで削り取る

まず、鋳型に金属を流し込み、ハサミの形を作ります。鋳型から取り出された状態では、まだ周りに余計な金属が付いている状態です。ここからこの余計な部分を削る作業があります。やすりを使って削っていくのですが、目の細かさや曲がりの角度によって何種類ものやすりを使い分けます。

何種類あるのかわからないくらいのドリルの芯。まるで森のよう。

ドリルでハサミの中心に穴を開ける

専用のカナヅチで「かしめる」作業を行う

完成したハサミ

余計な金属を削り取った後は、ハサミの真ん中部分に穴を開けます。ドリルの芯の直径はわずか0.5mm~1mmしかありません。非常に精密な作業です。穴を開けると、そこに金属の棒を通します。金属の棒を適当な長さに切断し、最後に0.5mm程度と微妙に突き出た先端を専用のカナヅチで潰します。この作業を「かしめる」と言うそうです。これで、見事、ハサミの完成です!

実際にハサミは使える

しかし、ここで終わりません。このハサミ、実際に紙を切ることができるのです。ただ、小さいだけでは満足しない小宮さんの哲学が色濃く表れています。切ってみると、確かに、ジャキジャキと紙を切っている感覚が手に伝わってきます。ああ、本当にハサミだ、すごい。

小宮さんの作品はこのように精密な作業を通して生み出されているのです。

小さい世界の未来は?

今後、どんな新しい作品を小宮さんは生み出していくのだろう、とワクワクします。と、小宮さんがおもむろに「いま、扇風機を作っているんです」と切り出しました。

扇風機は実際に回る

扇風機?ハサミやカナヅチなどよりもっと複雑な形をしているのに、それもミニチュアで作ってしまうのですか!で、まさか動くのでは?「動きます」、と小宮さん。電池に扇風機を繋げると、確かに羽根が軽快に回り始めます。扇風機から送り出された風がほのかに漂います。

小宮さん、一体どこまで小さくすれば気がすむんですか!そんな小宮さんが今後また何を世に送り出していくか、目が離せません。

金切り鋏

実はHINOKOの小宮さんが製作されているハサミにはいくつか種類があり、今回ぺぺぺ百貨店でお取り扱いさせていただくものの一つは「金切り鋏」です。鉄製です。

本物のハサミのような佇まい

紙もザクザクっと切れます

材質
サイズ 3.2cm(ハサミを畳んだ時の長さ)
価格(税込) ¥3,000
支払い方法 クレジットカード・銀行振込み
送料(税込) ・ゆうパック:全国一律680円 / 買い物合計金額15,000円以上の場合は送料無料
・定形外郵便:全国一律250円
発送予定 ご注文日から2~3日以内
備考 写真の色はディスプレイの環境によって実物と若干異なる場合があります。

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